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「モリンネ」リハーサルレポート1

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乗越たかお氏の舞踊評論家[養成→派遣]プログラム二期生の中本登子さんによる
「モリンネ」のリハーサルレポートです
ぜひご一読ください!!

 
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利口な女狐と森の声
−『モリンネ』リハーサルレポート−
中本登子
(乗越たかお【舞踊評論家[養成→派遣]プログラム】第二期受講生)

振付家、関かおりは「歌(声)ってすごく動物的だなと思う」、「歌うことは呼吸と繋がっていて、ダンスの身体とは次元が違い、内臓的だと感じる」とオペラの指導の方の声を聞いた時思ったという。
私たちに死が訪れるのは、脳や筋肉が動かなくなった時ではなく、内臓が止まった時だ。声は、筋肉のようにコントロールが効くものではなく、生物として直接沸き起こる生命と直結した何かだということだろう。

吉祥寺ダンスLABは、毎回ダンスと奇想天外なジャンルを掛け合わせた企画だ。7回目となる今回は「関かおりPUNCTUMUN」と「物語」を融合したものになるという。
関かおりは、横浜ダンスコレクションE X2012「若手振付家のための在日フランス大使賞」とトヨタ コレオグラフィーアワード2012「次世代を担う振付家賞」をダブル受賞した振付家で、国内外から招聘され作品を上演している。

今回の作品は、ルドルフ・チェスノフリーデクの『利口な女狐の物語』をモチーフにしている。

幼い女狐ビストロウシカと人間の門番の諍いなどを中心に、生物や人間の生き様を風刺した物語だ。

関は、同作品をレオシュ・ヤナーチェクがオペラにした、合唱符やオーケストラの奏でる旋律から自然観を感じ取り、断片的に表すことも試しているという。

今回の題材の狐なのだろうか、リハーサルでは、四つ足歩行の姿勢でゆっくりとした動きを、関自身がとてつもない身軽さで見せていた。その後、ダンサーはまるで感覚が感染していくかのようにミリ単位で動きを受動していた。
普段クラッシックバレエに触れることが多い筆者だが、バレエのフォルムを重視したスタイルとは違うそのゆっくりとした動きを観ていると、自分自身も生物であり内臓に死までの時間を内在していることを強く感じる。その体の動きを脳内で真似ると、ゆっくりと感覚が蘇り、心地良すぎて思い出すことがクセになる。
さらに関の振付の妙は、騙し絵のようにダンサーの身体の組み合わせを変形させることである。それは、昆虫にも動物にも建築物などにも見え、視覚の曖昧性を巧みに用いている。
この作品は、音、体、視覚などがメタレベルで解体され、再構築されているのだ。

関は「今まで男女の区別はなく作品を創造してきたが、今回は初めて動物として生命の根源、男女(雄雌)の生殖を取り扱っている」という。
 このクリエーションは、生殖によって受け継がれる生命を通して、生物としてより自由な世界とは何かを鑑み、体感する作品となるのではないかと思った。

(監修:乗越たかお@舞踊評論家[養成→派遣]プログラム)

[今回のコラボレーションにつきまして]

関かおりPUNCTUMUN×舞踊評論家[養成→派遣]プログラム

舞踊評論家の乗越たかおです。
現在私がメンターとなり、舞踊評論家を本気で育てる【舞踊評論家[養成→派遣]プログラム】の第二期を進めております。
そんなおり、関かおりさんのカンパニー「関かおりPUNCTUMUN」様から受講生による稽古場レポートの依頼がありました。

受講生はまだ勉強中の身とはいえ、これは書き手の知見を広げる実践的な機会であり、またアーティスト側にとっても、新しい書き手との出会いの可能性もあり、本プログラムの意義と可能性を示すものとして、積極的に取り組まさせていただきました。

今回は当プログラム第二期受講生の中本登子が挑戦いたしました。
乗越たかおは監修という形で最終的な責任を負いますが、あくまでも書き手のオリジナリティを尊重し、取材も中本一人で行っております。

「関かおりPUNCTUMUN」の皆さんは非常に温かく中本を迎え入れて下さり、アーティストと評論家の関係に新しい視点を提案してくださいました。
ありがとうございました。

こうしたプログラムの伸張をこれからも続けて行きたいと思います。ありがとうございました。

乗越たかお

 
 
中本登子さんプロフィール

4歳よりクラッシックバレエをはじめ、16歳の時School of American Balletに留学。
その後、クラッシックバレエの主役、ソリスト、バランシン作品などを踊る。
慶應義塾大学文学部でフランス文学を学び、バレエに関する著書『文学的「バレエ ジゼル」のすすめ』(奏亘書房)がある。
バレエ教室、レンタル衣裳、出版、企画など行う「穂坂バレエグループ」代表。
乗越たかおの舞踊評論家[養成→派遣]プログラム二期生。