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マアモント

 

ー境界線を曖昧にして、身体のあらゆるところで受け取る。
 においも、手触りも、皮膚の内側から全部を使って確かめて。
 目玉がこぼれ落ちて、暗闇の中でも、見失わないように。ー

 

振付・演出: 関かおり
出演: 井上大輔 黒須育海 辻田暁 中島加奈子 吉村和顥 関かおり
演出助手: 米山明花
  
STAFF 
舞台監督: 鈴木康郎
照明: 髙田正義(RYU)
音響: 堤田祐史(LAYEE INC)
衣装: 竹内陽子
香り演出協力: (有)香りのデザイン研究所 吉武利文
宣伝美術: 浮舌大輔(20TN!)
撮影: 松本和幸
制作: PLATEAU

※組織名・肩書は当時のものです。


[上演記録]

初演 2010年12月15日 / 上演時間約70分
会場 space EDGE

2012年7月 ショートバージョン 上演時間 20分 会場 世田谷パブリックシアター
出演 岩渕貞太 後藤ゆう 矢吹唯 関かおり (トヨタコレオグラフィーアワード参加)
2010年12月15日 / 上演時間約70分 会場 space EDGE


[作品について]

タイトルの「マアモント」は、エストニア語の、土(マア)と、もぐら(モント)からの造語。
恋人でも家族でも 同じ時間、同じ風景を見て、どんなに共感しあえたつもりでも、
他人と端から端まで全部が本当に、同じ感覚になることはないのだと思う。
抱きしめ合っていても、相手の視線はテレビに向かっていたりするし
それでも、隣にいる人と、その肉を溶かしてどこまでも溶け合いたいと思うし
ふとした瞬間、今は近くにいない人の存在感に、いつも包み込まれているような錯覚を起こす。
匂いも、そこから想像される世界や、思い出す風景、好みや、感じ方は人それぞれで
何を思うかは、その人が過ごして来た時間や経験によって、全然違うのだと思うし それが面白いのだと思う。

匂いから記憶が引き出されて、その時の空気だとか、風景だとかを思い出すことがあるように、
観客が五感を使い、身体の中に残っている記憶を引き出しながら、目の前で起こる出来事を 味わってほしい。

※使用している3つの香りのコンセプト
  1、作品の世界の匂い
  2、生き物の匂い
  3、記憶(なつかしさ)に触れる匂い


[チラシ推薦文]

いま作り手として最も興味深い存在の一人である関かおりを見ていて、思い出すのがクリオネだ。天使のような外見で「氷の海の妖精」 などと呼ばれているが、実は餌を補食するとき、頭に見える部分がパッカリと割れて、エゲつないくらいの勢いで喰らう。 関もおかっぱ頭で、顔は少女のように見える。幼い頃からバレエをやっていた動きは端正で抑制が利き、一見極めてノーマルだ。 しかし次第に「何かおかしい......」と思えてくる。いつの間にか動きが昆虫的になっていったり、身体中がヌルヌルするものに覆われていたりする 。 通常の公演の安全圏からスルリと抜け出して、気がきがつくと観客は見知らぬ世界に立ち尽くすことになる。そして、気がつくと観客は 見知らぬ世界に立ち尽くすことになる。そういう関ならではの「世界の構築能力」がズバ抜けているのだ。 その世界の全貌をもっもっと知りたくて観客はさらに見続けることになるのである。今回の作品では匂いを扱うという。
目に見えぬ者を関がどう補食するのか。まあ楽しみではないか
(舞踊評論家 乗越たかお)

   

[批評文]

狭い空間のなか、香りのアーティストとゆっくり動く身体が拮抗する。
エネルギーを発散するのではなく自らの中にうずめて溶解させるような、強固で濃密なダンス世界を構築していた。
いつまでも見ていたかった。
(乗越たかお /シアターガイド2011年3月号掲載) 


明るいクリーム色の床面、そのうえに肌の色に近いコスチュームを着けたダンサ ーがいる。幕が開く瞬間、ナッツのような甘い香りがあわく鼻腔に触れてきた。 気のせいかも知れないが、微かな淡い刺激が視覚のみならず、五感を撫でてくる、 終始そんなダンスだった。まるで彫刻のように明るい床面に屹立しているダンサ ーたちも独特の存在感なのだが、特筆すべきことは別にある。例えば、始まりの ほうで 2 人の女が現われた場面でのこと。1 人が脚を柔らかく横へ伸ばした隙に、 その脚の裏腿めがけてもう 1 人の女が頬を這わせた、そしてその頬がふくらはぎ を撫で、足先をめぐり脚の上部を頬で触れていったとき、本作の狙う独特の的が 見えた気がした。(中略) 脚の上に頬を沿わせる関の振付は、動きとしてユニークである以上に、見る者の 身体感覚を刺激する仕掛けとして見事機能している。ほかにも、仰向けの相手の 顎と自分の顎を屈みながらかみ合わせて引っ張り移動させるというシーンもユニ ークで、見ていると自分の顎がそわそわしてくる。ダンスは、動きの形をつくっ たりその精度を高めたりするものであるのみならず、(ダンサーのみならず観客 の)身体へ向けたトライアルでもあるはずで、この点に関して、今年のトヨタは 最終組の関だけが突出していた。(中略)関作品はなににも似ていない、そ して、正真正銘のダンス作品だった。
(artscape 2012年7月 木村覚) 

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©Kazuyuki Matsumoto